退職金確定申告初心者2026|AFP宅建士が解く7つの申告判断軸

退職金の確定申告は、初心者が「そもそも申告が必要なのか」から迷う手続きです。私はAFP・宅地建物取引士として500人超の保険・資産形成相談に携わってきましたが、退職金まわりの申告判断で損をしているケースは少なくありません。本記事では、2026年時点の制度をふまえ、申告が必要か・不要かを左右する7つの判断軸を整理します。

退職金確定申告の基本構造を初心者向けに整理する

退職所得の計算式と退職所得控除の仕組み

退職金は「退職所得」として他の所得とは分離課税されます。計算式は次のとおりです。

退職所得 =(退職金の収入金額 − 退職所得控除額)÷ 2

退職所得控除額は勤続年数によって変わります。勤続20年以下なら「40万円×勤続年数」(最低80万円)、20年超なら「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」です。勤続30年なら800万円+700万円=1,500万円の控除が適用されます。この控除の厚さが、退職金課税を他の所得より有利にしている根拠です。

2分の2ではなく「÷2」が入っている点も重要で、実際に課税される所得は受け取り額の半分以下になることが多い。初心者がまず押さえるべき計算構造はここです。

「退職所得申告書」を提出したかどうかで課税方式が変わる

「退職所得の受給に関する申告書」(以下、退職所得申告書)を勤務先に提出しているかどうかで、源泉徴収の計算方式がまるで変わります。

申告書を提出した場合、勤務先が退職所得控除を反映したうえで正確な源泉徴収税額を計算します。この場合、受け取る退職金が退職所得控除の範囲内であれば税額ゼロ、超えていても適切な税額だけが源泉徴収されます。

一方、申告書を提出しなかった場合は、収入金額の20.42%(復興特別所得税含む)が一律源泉徴収されます。勤続年数が長ければ退職所得控除が大きいため、一律20.42%は明らかに過徴収になりやすい。このケースでは確定申告によって還付を受けることが可能です。

保険代理店時代に見た「申告書未提出」の落とし穴

総合保険代理店3年間で相談を受けた経営者・個人事業主の事例

私が総合保険代理店に在籍していた3年間、経営者や個人事業主のお客様から退職金がらみの相談を多数受けました。なかでも印象深いのが、定年退職後に保険の見直し相談で来られた50代の方のケースです。

その方は退職所得申告書を会社に提出していなかったため、退職金約2,000万円に対して一律20.42%、つまり約408万円が源泉徴収されていました。しかし実際の退職所得控除は勤続35年で計算すると約1,850万円。退職所得は(2,000万円−1,850万円)÷2=75万円です。税率5%なら課税額は3.75万円にすぎません。

確定申告で還付請求すれば400万円以上が戻ってくる計算でしたが、「確定申告が面倒だから放置していた」という状態でした。手続きの複雑さを理由に数百万円を放置するのは非常にもったいない話です。申告書の提出有無と、未提出時の還付申告は退職金確定申告の核心的な判断軸です。

2026年に自身の法人を設立した際に見直した退職金の位置づけ

私は2026年に自身の法人を設立し、インバウンド民泊事業を立ち上げました。法人化にあたって保険・年金・退職金設計を一から見直す機会があり、改めて退職金の税務上の扱いを自分ごととして再検討しました。

法人の場合、役員退職金は退職所得として個人に課税されますが、法人側では損金算入できるため、節税スキームとして機能する場合があります。ただしこれはあくまで「保険を活用した節税スキームの一例」であり、個別の事情や法人規模・役員構成によって効果は異なります。導入可否の最終判断は税理士・FP等の専門家への確認を強くお勧めします。

自分で経験したからこそ断言できますが、法人化前後の退職金設計は、個人の確定申告よりはるかに複雑です。早めに専門家と設計しておくことで選択肢が広がります。

源泉徴収と税額精算の仕組みを7つの判断軸で捉える

判断軸①〜④:申告が必要かどうかを決める4つの条件

退職金の確定申告が必要かどうかは、以下の4つの軸で判断します。

  • 判断軸①:退職所得申告書を提出したか否か 未提出なら一律20.42%源泉徴収のため、還付申告が有効なケースが多い。
  • 判断軸②:退職所得が退職所得控除を超えているか 控除額の範囲内なら税額ゼロ。超過分があれば申告書提出済みでも精算確認が必要。
  • 判断軸③:同一年に複数の退職金を受け取ったか 転職や役員退任などで同一年に2回以上退職金を受け取ると、各社の源泉徴収が別々に計算され合算調整が必要になる。
  • 判断軸④:前年以前4年内に退職所得を受け取っているか 2022年以降の税制改正で、短期間に複数回退職金を受け取る場合の控除額計算に変更が加わっています。複数回退職の方は特に注意が必要です。

この4軸のうち一つでも該当する場合は、申告の要否を税務署または税理士に確認することを推奨します。中退共のメリットデメリット2026|AFP宅建士が解く6つの判断軸

判断軸⑤〜⑦:還付・追加納税の可能性を決める3つの条件

申告が必要かどうかとは別に、「申告すると得をする」かどうかも重要な判断軸です。

  • 判断軸⑤:医療費控除・寄付金控除等を同年に使えるか 退職所得は分離課税のため、医療費控除との直接合算はできません。しかし退職した年の給与所得・年金所得が別途ある場合は、それらと医療費控除を組み合わせることで総合課税部分の還付が狙えます。
  • 判断軸⑥:退職した年の住民税の特別徴収・普通徴収の切り替え 在職中は住民税が給与から天引き(特別徴収)されますが、退職後は普通徴収に切り替わります。退職所得に係る住民税は退職金支払い時に源泉徴収されるため二重徴収にはなりませんが、確認が必要なケースがあります。
  • 判断軸⑦:社会保険料の任意継続・国民健康保険との比較 退職後の健康保険料は退職所得の額に直接影響しませんが、翌年の住民税額が変わると国民健康保険料の算定に影響する場合があります。退職年度の申告内容が翌年の社会保険料に波及するため、全体設計が必要です。

退職金住民税と社会保険料への影響

退職金にかかる住民税の計算と特別徴収のしくみ

退職金に係る住民税は、所得税と同様に退職所得を課税標準として計算されます。税率は一律10%(道府県民税4%+市区町村民税6%)です。申告書を提出している場合、退職金支払い時に勤務先が源泉徴収するため、原則として住民税の確定申告は別途不要です。

ただし、退職所得申告書を提出しなかった場合は、所得税と同様に住民税も過徴収になっている可能性があります。住民税の還付申告は所得税の確定申告とは別に市区町村への申告が必要になる点に注意してください。退職金 住民税の取り扱いは、所得税の処理と連動して確認する習慣をつけることが大切です。

翌年の国民健康保険料への波及を見落とさない

会社員を退職した後に国民健康保険に加入すると、翌年の保険料は前年の所得を基準に計算されます。退職所得は「分離課税」のため、国民健康保険料の算定基礎には含まれない自治体が多いですが、自治体によって取り扱いが異なるケースもあります。

私が相談を受けたケースでは、退職後に個人事業主として独立した方が「退職金が多いと翌年の国民健康保険料が上がると聞いた」と誤解されていたことがありました。退職所得の扱いは事業所得・給与所得とは異なるため、混同しないようにすることが重要です。個別の事情により取り扱いが変わる可能性があるため、居住の自治体窓口や社会保険労務士への確認をお勧めします。中小企業退職金共済メリット2026|AFP宅建士が解く6つの活用軸

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まとめ:7つの判断軸と初心者が取るべき行動

退職金確定申告で初心者が確認すべき7軸チェックリスト

  • 退職所得申告書を勤務先に提出したか確認する(未提出なら還付申告を検討)
  • 退職所得控除額を勤続年数から計算し、課税所得の有無を把握する
  • 同一年に複数の退職金を受け取っていないか確認する
  • 前年以前4年内に退職所得があれば2022年改正の影響を確認する
  • 退職した年の給与所得・年金所得と医療費控除の組み合わせを検討する
  • 退職金の住民税が適切に源泉徴収されているか確認する
  • 翌年の国民健康保険料の算定基礎に退職所得が含まれるか自治体に確認する

この7軸はどれか一つを見落とすだけで、数十万〜数百万円単位の損失につながる可能性があります。特に退職所得申告書の提出有無は、申告書の存在自体を知らない方が多く、初心者が見落としやすい急所です。

退職金の申告判断はFP相談で全体最適化を図る

退職金の税務処理は、税務・社会保険・翌年以降の資産形成計画を一体で考える必要があります。確定申告の手続き自体はe-Taxで完結できますが、「どの軸で得をしているか・損をしているか」の判断はFPや税理士のサポートを活用することで、より体系的に整理できます。

私自身、AFP資格を持ちながらも自身の法人化・退職金設計においては、都内のFP事務所や税理士と複数回相談して意思決定しました。専門家に相談することは「丸投げ」ではなく、自分の判断精度を上げるプロセスです。最終判断はご自身でご確認いただきつつ、まずは相談の場を設けることから始めてみてください。

退職金の準備・申告・資産形成を一気通貫で相談したい方には、FPへの無料相談サービスの活用が選択肢の一つとして有力です。私が複数社比較した結果、オンラインで気軽に相談できるサービスは特に退職前後のライフプランニングで活用しやすいと感じています。

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筆者:Christopher(クリストファー)/AFP(日本FP協会認定)・宅地建物取引士。大手生命保険会社2年、総合保険代理店3年を経て、個人事業主・富裕層・経営者の保険×資産形成相談を多数担当。2026年に自身の法人を設立し、インバウンド民泊事業を運営中。保険見直し・FP相談・iDeCo・NISA等の資産形成を自身でも実践しながら、依頼者目線で情報発信を続けている。

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。

【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆

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