相続税の基礎控除は、2015年の税制改正以降「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式が適用されています。AFP・宅地建物取引士として500人以上の家計・資産形成相談に関わってきた私が、2026年時点の基礎控除の仕組みから計算手順、見落としやすい落とし穴、生前対策まで6つの判断軸で体験を交えて解説します。
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出されます。たとえば法定相続人が3人であれば、基礎控除額は4,800万円となり、遺産総額がこれを下回る場合は相続税がかかりません。ただし法定相続人の数え方には養子縁組の制限など細かいルールがあるため、計算前に必ず確認することをおすすめします。
相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×人数で決まる
基礎控除額の計算式と2015年改正の背景
現行の相続税基礎控除は、2015年1月1日施行の税制改正(相続税法第15条)によって定められた計算式です。改正前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」でしたが、改正後は大幅に引き下げられ、課税対象者が約4〜6%から約8〜9%台へと広がったとされています(国税庁統計年報参考)。
計算式は次のとおりです。
- 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 法定相続人が1人の場合:3,600万円
- 法定相続人が2人の場合:4,200万円
- 法定相続人が3人の場合:4,800万円
- 法定相続人が4人の場合:5,400万円
遺産の総額がこの基礎控除額を超えなければ、相続税の申告自体が原則として不要です。ただし「遺産の総額」には不動産・預貯金・有価証券・死亡保険金(非課税枠を超えた部分)なども含まれるため、計算は思いのほか複雑になります。
遺産総額の把握で見落としやすい4つの財産
相続対策を考える前提として、遺産総額の正確な把握が欠かせません。私が保険代理店時代に経営者や富裕層の相談を受けた際、次の4種類の財産を見落として基礎控除額を誤算しているケースが少なくありませんでした。
- 生命保険金の非課税枠超過分(500万円×法定相続人の数を超えた部分)
- 3年以内の生前贈与財産(2024年以降は7年以内に段階延長中)
- 相続時精算課税制度を適用した贈与財産
- 名義預金(実質的に被相続人が管理していた預貯金口座)
特に名義預金は税務調査で指摘されやすい項目です。子ども名義の口座であっても、通帳・印鑑・管理を親が行っていた場合は被相続人の財産として計上される可能性があります。遺産総額を計算する際は、これらを必ず含めて精査することが大切です。
法定相続人の数え方と養子の扱い——現場で見た典型的な誤算
保険代理店時代に気づいた「人数カウントミス」の実態
総合保険代理店に勤務していた3年間、相続対策を目的とした生命保険の相談に数多く携わりました。その中で繰り返し見てきたのが、「法定相続人の人数」を誤ってカウントしているケースです。相続税法上の法定相続人は、民法の規定に基づいて次の順序で決まります。
- 配偶者:常に法定相続人
- 第1順位:子(または孫などの代襲相続人)
- 第2順位:父母・祖父母(直系尊属)
- 第3順位:兄弟姉妹(または甥・姪)
注意が必要なのは、相続を放棄した人がいる場合でも、相続税の基礎控除を計算するための法定相続人の数には「相続放棄をしなかった場合の人数」を用いるという点です(相続税法第15条第2項)。相続放棄の有無にかかわらず人数は変わらないため、この点を誤解しているご家族は多く見受けられます。
養子縁組による法定相続人の加算——制限と注意点
相続税の基礎控除額を増やすために養子縁組を活用する手法は広く知られていますが、相続税法上は算入できる養子の数に制限があります。具体的には以下のとおりです(相続税法第15条第2項)。
- 実子がいる場合:養子は1人まで算入可
- 実子がいない場合:養子は2人まで算入可
たとえば子どもが2人いる家庭が養子を2人迎えても、基礎控除の計算上は養子1人分しか加算されません。一方、孫養子(孫を養子にするケース)は相続税が2割加算される場合があり、節税効果が思ったほど出ないこともあります。養子縁組を相続対策として検討する場合は、税理士やFPへの相談を強くおすすめします。個別の事情により効果は大きく異なります。
基礎控除超過時の相続税計算6ステップ
課税遺産総額から税額確定までの流れを整理する
遺産総額が基礎控除額を超えた場合、相続税の計算は次の6ステップで進みます。手順を把握しておくことで、どの段階で対策が有効かを判断しやすくなります。
- ステップ1:遺産総額を確定する(不動産・預貯金・有価証券・保険金等を合算)
- ステップ2:基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を算出する
- ステップ3:法定相続分どおりに遺産を按分し、各相続人の取得金額を仮定する
- ステップ4:各相続人の取得金額に相続税の速算表(10〜55%)を適用し、税額を算出する
- ステップ5:各相続人の仮税額を合算し「相続税の総額」を求める
- ステップ6:実際の相続割合に応じて按分し、各種控除(配偶者控除・未成年者控除等)を適用して最終税額を確定する
ステップ4で用いる速算表は国税庁が公表しており(国税庁ウェブサイト「相続税の税率」参照)、課税価格1,000万円以下は10%、6億円超は55%と、累進税率が設けられています。
配偶者控除と小規模宅地等の特例——活用で大きく変わる税額
基礎控除を超えた場合でも、適用できる控除・特例によって実際の納税額は大幅に変わります。代表的なものを整理します。
- 配偶者の税額軽減:配偶者が取得した遺産が1億6,000万円以下、または法定相続分以下であれば相続税がかからない(相続税法第19条の2)
- 小規模宅地等の特例:自宅土地330㎡まで評価額を80%減額できる制度(租税特別措置法第69条の4)
- 未成年者控除:相続人が18歳未満の場合、18歳に達するまでの年数×10万円を控除
- 障害者控除:相続人が障害者の場合、一定年数×10万円(特別障害者は20万円)を控除
小規模宅地等の特例は要件が複雑で、同居の有無・申告期限までの保有継続・使用継続などが問われます。私自身、2026年に法人を設立した際、事業用地と自宅用地の評価が絡む事例をFP仲間と議論したことがありましたが、適用要件の解釈は専門家でも見解が分かれることがあります。最終的な判断は税理士への確認を強くおすすめします。AFPとCFPの違い2026|AFP宅建士が示す6つの判断軸
相続税基礎控除に関するよくある質問
Q. 相続放棄をした場合、基礎控除の計算人数は減りますか?
A. 減りません。相続税法第15条第2項により、基礎控除を計算する際の法定相続人の数は、相続放棄がなかったものとした場合の人数を用います。相続放棄をした人がいても、法定相続人の数え方は変わらないため、基礎控除額も変わりません。
Q. 生命保険の死亡保険金は基礎控除の対象外ですか?
A. 死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」という別の非課税枠があります。この枠を超えた金額は「みなし相続財産」として遺産総額に加算されます。つまり保険金が非課税枠内に収まれば相続財産には含まれませんが、超過した分は基礎控除の計算対象となる遺産総額に算入されます。受取保険金の設計は相続対策において特に重要なポイントです。
Q. 生前贈与した財産は基礎控除の計算に影響しますか?
A. 2024年1月1日以降の贈与から、相続開始前7年以内の生前贈与財産は原則として遺産総額に加算されます(2023年税制改正)。ただし加算期間は段階的に延長されており、2030年以前の相続については経過措置が設けられています。また年間110万円以下の暦年贈与の非課税枠は引き続き有効ですが、運用には最新の税制を確認することが大切です。AFP相談おすすめ2026|現役AFPが選ぶ6つの判断軸
Q. 相続税申告が不要なケースでも申告したほうがよい場合はありますか?
A. あります。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用するためには、遺産総額が基礎控除内であっても申告が必要です。申告しないと特例が適用されず、本来支払わなくてよい税金が発生するケースがあります。「申告不要=何もしなくてよい」と判断せず、まず専門家に相談されることをおすすめします。
AFP宅建士が示す生前対策と相談窓口——6つの判断軸をまとめる
相続対策を始める前に押さえるべき6つの判断軸
私がAFPとして相談者に伝える相続対策の出発点は、「何のために対策するか」を明確にすることです。節税だけを目的にした対策は、家族間のトラブルや流動性リスクを生む場合があります。以下の6つの判断軸を確認してから、具体的な対策を検討することをおすすめします。
- 判断軸①:現在の遺産総額と基礎控除額のギャップを数字で把握する
- 判断軸②:法定相続人の数と属性(配偶者・子・養子など)を正確に確認する
- 判断軸③:適用できる特例・控除(配偶者控除・小規模宅地等の特例など)を洗い出す
- 判断軸④:生前贈与(暦年贈与・相続時精算課税)の活用余地を検討する
- 判断軸⑤:生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を活用しているか確認する
- 判断軸⑥:遺言書の有無と分割内容が節税と円満相続の両立に沿っているか検討する
私自身、2026年に法人を設立した際に自身の相続対策を改めて見直しました。法人化により資産の名義や評価が変わる部分があり、個人事業主時代の保険・資産設計を一から整理する必要がありました。その過程で、判断軸①と⑤の見直しが特に効果的だったと感じています。ただし、私の状況はあくまで一例であり、個別の事情により対策の優先順位は大きく異なります。
FP・専門家への相談が相続対策を加速させる理由
相続対策は「知っているかどうか」で対策の幅が大きく変わります。私が保険代理店に勤務していた3年間、経営者・富裕層のお客様を担当してきた経験から言うと、早期に専門家へ相談したご家族ほど、選択肢の多さと節税効果の実感度が高い傾向がありました。
一方で、「相談すれば必ず節約できる」とは断言できません。個別の財産構成・家族構成・事業状況によって、対策の有効性は大きく異なるからです。FPへの相談は、あくまで「自分の状況を整理し、選択肢を知る」ためのプロセスとして位置づけることが大切です。
相続税の基礎控除を正確に把握し、6つの判断軸に沿って生前対策を進めるために、まずはFP相談を活用することを選択肢の一つとしてご検討ください。最終的な税額計算や申告については、税理士への確認を必ず行うことを推奨します。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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