個人事業主の保険選びで失敗する人には、共通のパターンがあります。私はAFP・宅地建物取引士として、大手生命保険会社と総合保険代理店で計5年間、フリーランスや経営者の保険相談を数多く担当してきました。その経験から言えるのは、「入りすぎ」と「漏れ」が同時に起きているケースが驚くほど多いということです。本記事では、個人事業主の保険失敗を招く7つの典型パターンと、2026年現在の視点での回避軸を具体的に解説します。
失敗①〜③:過大保障・所得補償の欠落・節税偏重という三大の罠
失敗① 死亡保障を”感覚”で設定する過大保障の罠
個人事業主の保険失敗で私が代理店時代に何度も見てきたのが、死亡保障額を「なんとなく3,000万円」「勧められたから5,000万円」と感覚で決めるケースです。会社員であれば遺族年金や退職金など公的・企業的なバックアップがありますが、個人事業主にはそれがありません。だからこそ、必要保障額を「実際にいくらあれば家族が生活できるか」という計算から逆算する必要があります。
必要保障額の基本式は「生活費の不足分×年数+教育費+住宅ローン残高−貯蓄・資産」です。この計算をせずに契約すると、毎月3〜5万円の保険料を払いながら、実際には半分以下の保障で十分だったというケースも珍しくありません。過大保障は単純な家計の無駄であり、その分を小規模企業共済やiDeCoに回したほうが、長期的な資産形成の観点から合理的な場合があります。
失敗② 所得補償保険を後回しにする致命的な見落とし
フリーランス・個人事業主にとって、病気やケガで働けなくなった時のリスクは、死亡リスクよりも現実的に高いと私は考えています。会社員には傷病手当金(最大1年6か月・標準報酬日額の3分の2)がありますが、個人事業主にはこの制度が原則適用されません。国民健康保険には傷病手当金の規定がなく、自治体によって対応が異なる点も要注意です。
にもかかわらず、相談に来る個人事業主の方の多くが所得補償保険(就業不能保険)を未加入のまま放置しています。月収30万円の方が3か月入院した場合、収入は90万円減少しますが、医療保険の入院給付金(日額5,000〜1万円)だけではとても補いきれません。所得補償保険は月額保険料1万円前後から加入できる商品も多く、フリーランス保険の中核に位置づけるべき保障です。個別の事情により保険料・保障内容は異なりますので、複数社を比較してご確認ください。
失敗③ 節税目的だけで保険を選ぶ誤算
「保険で節税できると聞いて」という動機で加入する個人事業主は少なくありません。確かに、小規模企業共済の掛け金は全額所得控除(上限月7万円・年84万円)になりますし、iDeCoも同様に所得控除の対象です。これらは適切に活用すべき制度です。
一方で、節税効果を前面に打ち出した一部の生命保険商品については、2019年以降の国税庁通達改正により税務上の取り扱いが厳格化されています。節税を主目的として保険を選ぶと、解約返戻金のタイミングと課税のバランスが崩れ、かえって手元資金が減るケースもあります。保険を活用した節税スキームの一例として紹介されるケースでも、個別の税務判断は税理士・FPへの相談が不可欠です。「節税になる」という言葉だけで判断することは避けてください。
私が2026年の法人化前後で経験した保険見直しの実態
個人事業主から法人成りするタイミングで保険契約は大きく変わる
私自身、2026年に自身の法人を設立したタイミングで、保険契約を一から見直しました。それまで個人事業主として加入していた生命保険・医療保険・所得補償保険が、法人化後にどう変わるべきかを整理する必要があったからです。
具体的には、個人で加入していた定期保険を法人契約に切り替えるかどうか、医療保険は個人契約のまま継続するかどうかという判断が必要になりました。法人契約の生命保険は、損金算入ルール(2019年通達)によって保険種類ごとに扱いが異なるため、単純に「法人で入れば節税」とはなりません。私はこの時点で都内のFP事務所に相談し、複数社の保険を比較した上で、所得補償保険は個人契約のまま継続する選択をしました。
代理店時代に見た富裕層・経営者の保険失敗パターン
総合保険代理店で3年間勤務していた頃、経営者や富裕層の保険相談を数多く担当しました。その中で繰り返し目にしたのが、「複数社の保険に重複して加入しているが、自分でも内容を把握していない」という状態です。
ある経営者の方は、入院日額が計4万円になるほど医療保険を重複加入していましたが、実際の入院費用は高額療養費制度を使えば月8〜10万円程度に抑えられるケースがほとんどです。一方で、事業が止まった時の収入補填になる所得補償保険は一切未加入でした。保障の「量」ではなく「種類のバランス」が問題で、これはフリーランス保険の選び方全般に共通する視点です。
失敗④〜⑤:見直し放置と公的制度の無理解がもたらす損失
失敗④ ライフステージが変わっても保険を放置し続ける
個人事業主の保険見直しを怠る人は非常に多いです。独身時代に加入した死亡保障が、結婚・子どもの誕生後もそのまま、というケースは代理店時代に珍しくありませんでした。逆に、子どもが独立した後も高額な死亡保障を維持し続け、毎月数万円の保険料を払い続けている方もいます。
個人事業主の保険見直しは、少なくとも「3年に1度」または「ライフイベントのタイミング」で行うことを私は推奨しています。収入の変動が大きい個人事業主は特に、前年の確定申告が終わった後に保険料と保障のバランスを確認する習慣をつけることが効果的です。AFPとCFPの違い2026|AFP宅建士が示す6つの判断軸
失敗⑤ 国民年金・国保の仕組みを理解しないまま民間保険に頼る
個人事業主が加入する国民年金には、障害基礎年金・遺族基礎年金という公的保障が含まれています。2024年度の障害基礎年金1級は年間約102万円、2級は約82万円です(物価スライドにより変動)。これを知らずに民間の障害保険や収入保障保険を過剰に積み上げると、保険料の二重払いになります。
また、国民健康保険料は前年の所得に連動するため、収入が増えた年の翌年は保険料が大幅に上がります。この仕組みを理解した上で、小規模企業共済やiDeCoによる所得圧縮を計画的に行うことで、国保料の軽減にもつながります。公的制度と民間保険の役割分担を整理することが、個人事業主の保険選び方の出発点です。
失敗⑥〜⑦:比較不足と相談先の選択ミスが招くコスト増
失敗⑥ 1社しか比較せずに加入する
個人事業主の保険失敗のうち、相談の場で最も多かった原因が「1社しか比較していない」という事実です。知人の紹介で入った保険、昔から付き合いのある担当者からそのまま継続している保険、これらが「比較なし」で続いているケースは非常に多いです。
所得補償保険を例にとると、同じ月額5万円の保障でも、保険料は月3,000円台から1万円超まで商品によって大きく異なります。また、免責期間(支払いが始まるまでの期間)が60日のものと7日のものでは、自営業者にとっての実用性がまったく違います。複数社比較した結果として契約することが、生命保険選び方の基本原則です。
失敗⑦ 相談先を間違える——販売側と中立側の違いを知る
保険の相談窓口には大きく分けて、特定の保険会社の営業担当者、乗合代理店のアドバイザー、そして独立系FPの3種類があります。それぞれに利益構造が異なり、受けられるアドバイスの性質も変わります。
私が代理店に在籍していた時は、取り扱い商品の範囲内でしか提案できない制約がありました。独立系FPに相談することで、保険以外の選択肢(iDeCo、NISA、小規模企業共済など)も含めたトータルの資産形成計画として提案を受けられます。ただし、FPへの相談が必ずしも全員にとって適切とは限らず、相談によって最適化が期待される場面と、自分で情報収集して判断できる場面を見極めることも重要です。最終的な判断はご自身で行い、必要に応じて専門家への相談を検討してください。AFP相談おすすめ2026|現役AFPが選ぶ6つの判断軸
回避7軸の実践手順とまとめ——個人事業主の保険失敗を防ぐために
7つの回避軸チェックリスト
- 回避軸① 死亡保障は「必要保障額の計算式」から逆算して設定する
- 回避軸② 所得補償保険(就業不能保険)を保障の中核に置く
- 回避軸③ 節税目的の保険加入は、2019年通達後のルールを税理士・FPと確認してから判断する
- 回避軸④ 法人化・結婚・出産・収入変動のタイミングで必ず保険見直しを実施する
- 回避軸⑤ 国民年金・国民健康保険の公的保障を把握した上で民間保険を上乗せする
- 回避軸⑥ 同種の保険を最低でも3社以上比較し、免責期間・支払要件まで確認する
- 回避軸⑦ 相談先の利益構造を理解し、中立的な立場のFPや専門家への相談を選択肢に加える
2026年の個人事業主に必要な保険観——まず「漏れ」を埋めることから始める
個人事業主の保険失敗を防ぐために、私が伝えたいことは一つです。「保障の量を増やすより、種類のバランスを整えることを優先してください」ということです。死亡保障が厚くても、働けなくなった時の収入補填がなければ事業は止まります。節税になると言われて加入した保険が、解約時に想定外の課税を受けることもあります。
私自身、2026年の法人設立前後に複数のFPに相談し、生命保険・医療保険・所得補償保険・iDeCo・小規模企業共済を組み合わせて整理した経験から言えるのは、「一度プロの目で棚卸しをする」ことの価値は確かにあるということです。ただし、相談の結果がそのまま正解とは限らず、最終判断はご自身の状況・価値観に基づいて行ってください。
フリーランス保険・個人事業主の保険見直しについて、資産形成まで含めたトータルの相談先をお探しであれば、以下のサービスが選択肢の一つとして検討する価値があります。個別の事情により最適な内容は異なりますので、まずは相談から始めることをおすすめします。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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