個人事業主の保険のやり方2026|AFP宅建士が示す6つの加入軸

個人事業主の保険のやり方を、AFP・宅地建物取引士として5年以上にわたり個人事業主・富裕層・経営者の保険相談を担当してきた私・Christopherが解説します。会社員と異なり、傷病手当金も充実した退職金制度もない個人事業主にとって、保険は「入れば安心」ではなく「何をどの順番で選ぶか」が命綱です。本記事では加入の6つの軸を実体験とともに示します。

個人事業主に保険が必要な理由|公的保障の”穴”を直視する

会社員との保障ギャップは想像以上に大きい

個人事業主の保険のやり方を語る前に、まず公的保障の現状を正確に把握することが先決です。会社員には健康保険組合による傷病手当金(休業4日目から最長1年6か月、標準報酬日額の3分の2)がありますが、国民健康保険にはこの制度がありません。2022年から国民健康保険にも任意で傷病手当金を設けられるようになりましたが、全市区町村が導入しているわけではなく、支給水準も保険者によって異なります。

また、会社員が加入する厚生年金と比較すると、国民年金のみの個人事業主が受け取れる障害基礎年金は2級で年間約78万円(2024年度額)にとどまります。この金額では、月の固定費すら賄えないケースがほとんどです。私が総合保険代理店に在籍していた3年間、フリーランスや個人事業主の方から「もし長期入院したら収入がゼロになる」という相談を何十件と受けました。その不安は現実の数字に裏打ちされています。

個人事業主が特に意識すべき3つのリスク領域

個人事業主が直面するリスクは大きく3つに分類できます。第一は「就業不能リスク」、第二は「死亡・高度障害リスク」、第三は「賠償・対人対物リスク」です。この3領域のうち、個人事業主が見落としやすいのは就業不能リスクです。

就業不能保険は、病気やケガで長期間働けなくなった場合に月額の給付金を受け取れる保険で、2010年代後半から各社が本格的に展開し始めました。給付金額の設定は月収の60〜70%程度を目安にするのが一般的な考え方ですが、個別の事情により異なりますので、実際の加入額はFPや専門家への相談をあわせてご検討ください。フリーランスの保険選び方として、この就業不能保険を起点に考えることを私は強く推奨しています。

私が2026年の法人化時に直面した保険見直しの実態

個人事業主から法人への切り替えで保険設計が根本から変わった

2026年に自身の法人を設立してインバウンド民泊事業を立ち上げた際、私は自分自身の保険を全面的に見直しました。個人事業主時代に加入していた所得補償保険は、法人の代表取締役という立場に変わると契約条件が変わるケースがあります。保険会社によって「役員報酬」をどう扱うかの解釈が異なるため、既存の契約が期待どおりに機能しない可能性があると複数の保険会社担当者から説明を受けました。

AFP資格を持つ私でも、自分自身の保険を客観的に整理するのは容易ではありませんでした。そこで都内のFP事務所に相談し、第三者の視点で現状の保障を棚卸ししてもらいました。その結果、就業不能保険と医療保険の重複部分を整理し、保険料を月換算で数千円単位で削減しながら保障の質を落とさない設計にたどり着きました。「保険は入り続ければいい」という発想は個人事業主にとってリスクになる、と痛感した体験です。

保険代理店時代に見た経営者の加入パターンと失敗例

総合保険代理店での3年間、富裕層や中小企業経営者の保険相談を多数担当しました。印象的だったのは、売上規模が年間数千万円を超えるフリーランスの方が、医療保険だけに月3万円以上支払い、就業不能保険は未加入だったケースです。医療保険の入院給付金は「日額1万円×入院日数」で計算されますが、長期療養が必要な疾患では入院よりも自宅療養期間のほうがはるかに長く、就業不能期間全体をカバーするには不足します。

一方、保険に加入しすぎて手取りを大きく削っている個人事業主も多くいました。月収40万円のフリーランスが保険料に月6万円以上支払っているケースもあり、保障内容よりも「なんとなく安心感」で加入しているパターンでした。個人事業主の保険加入で大切なのは、保険料総額をコントロールしながら優先度の高いリスクから順番に埋めていくことです。

就業不能保険と医療・生命保険の選定基準|6つの加入軸

加入軸の優先順位と選定の考え方

個人事業主の保険加入で私が推奨する6つの軸は以下のとおりです。この順序は「公的保障の穴の大きさ」と「月々の保険料負担のバランス」を基準に整理しています。

  • ①就業不能・所得補償:長期療養時の収入減少を補う最優先の軸
  • ②医療保険:入院・手術費用の自己負担を補う軸(先進医療特約を含む検討も有効)
  • ③生命保険(死亡保障):遺族・事業継続に必要な場合に設計する軸
  • ④賠償責任保険:業務上のミスや事故リスクを補う軸(特にIT・士業・対人サービス業)
  • ⑤就業不能×収入保障保険の組み合わせ:保険料を抑えながら保障期間を長期化する軸
  • ⑥iDeCo・NISAとの併用設計:保険料を節制して資産形成に振り向ける軸

6つすべてを一度に揃える必要はありません。まず①と②を軸に据え、収入規模や家族構成に応じて③以降を加えていくのが現実的な進め方です。AFPとCFPの違い2026|AFP宅建士が示す6つの判断軸

就業不能保険の加入手順と確認すべき3つのポイント

就業不能保険を選ぶ際に確認すべき点は、大きく3つあります。第一は「不就業の定義」です。保険会社によって「入院中のみ」「自宅療養も含む」「就労不能の程度」の基準が異なります。個人事業主は在宅での軽作業が可能な状態でも実質的に収入がゼロになることがあるため、自宅療養をカバーする定義の商品を選ぶことを検討する価値があります。

第二は「免責期間(待機期間)」の長さです。60日型と30日型が多く、免責期間が短いほど保険料は高くなる傾向があります。緊急予備資金として3〜6か月分の生活費を手元に確保できているなら、免責期間を長めに設定して保険料を抑える選択肢もあります。第三は「給付期間」です。2年型・5年型・60歳まで等があり、30〜40代の個人事業主であれば60歳までの長期型を検討する価値があります。なお、フリーランスの保険選び方として、職業告知の内容も契約可否に影響するため、申込前に必ず約款・重要事項説明書を確認してください。

保険料控除で節税する流れ|個人事業主が見落とすポイント

生命保険料控除・社会保険料控除の仕組みを正確に理解する

個人事業主が活用できる保険料控除は主に2種類あります。生命保険料控除(所得税で最大12万円、住民税で最大7万円)と社会保険料控除(国民健康保険料・国民年金保険料の全額控除)です。所得税の生命保険料控除は「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3区分に分かれており、それぞれ最大4万円(合計最大12万円)の控除が受けられます(2012年1月以降の新契約ベース)。

注意したいのは、就業不能保険は「介護医療保険料控除」の対象になるケースが多い点です。ただし商品設計によって区分が変わる場合があるため、加入前に保険会社の担当者または保険証券に記載の区分を確認してください。保険を活用した節税スキームの一例として、保険料控除の枠を意識しながら商品を組み合わせることで、実質的な手取り負担を軽減できる可能性があります。最終的な税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。

小規模企業共済・iDeCoとの組み合わせで節税効果を高める

個人事業主の保険設計と並行して検討したいのが、小規模企業共済とiDeCoです。小規模企業共済は掛け金(月額1,000円〜70,000円)の全額が所得控除の対象になり、廃業・退職時に退職金として受け取れます。iDeCoも掛け金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象で、個人事業主の場合は2024年時点で月額最大68,000円まで拠出できます。

私自身、iDeCoとNISAを組み合わせた資産形成を継続しながら、保険料の総支出額を毎年末に見直しています。保険料・iDeCo掛け金・小規模企業共済掛け金の合計が月収の20〜25%を超えてくると手元資金が圧迫されるため、この比率を目安に各金額を調整しています。あくまで私個人のケースであり、個別の事情により適切な比率は異なりますが、一つの参考値として示しておきます。AFP相談おすすめ2026|現役AFPが選ぶ6つの判断軸

まとめ|個人事業主の保険のやり方を6つの軸で整理し、次の一手を踏み出す

6つの加入軸と行動ステップの総整理

  • 公的保障のギャップ(傷病手当金なし・障害基礎年金の水準)を数字で確認する
  • 就業不能・所得補償保険を起点に加入設計を組み立てる
  • 医療保険は「入院給付」だけでなく自宅療養カバーの有無を確認する
  • 生命保険(死亡保障)は遺族への影響と事業継続の必要性から逆算して設計する
  • 保険料控除の3区分(一般・介護医療・個人年金)を意識した商品の組み合わせを検討する
  • iDeCo・小規模企業共済と保険料の合計支出を月次でコントロールし、過剰加入を防ぐ

個人事業主の保険加入で大切なのは「何となく入る」ではなく「何のリスクをいくらで埋めるか」を言語化することです。AFP・宅建士として多くの相談を受けてきた私の経験上、保険設計に悩む個人事業主の多くは、そもそも自分の公的保障の水準を把握していない段階からつまずいています。まず自分の国民健康保険料の納付額と、もし3か月間収入がゼロになったときの生活費を計算するところから始めてください。

FP相談を活用して保険設計を客観的に整える

保険の最終判断はご自身の収入・家族構成・事業内容によって大きく異なります。私自身が法人化の際に経験したように、どれだけ専門知識があっても自分の保険を客観的に設計するのは難しいものです。FP相談を活用することで、現在の保障の重複・不足を整理し、保険料の無駄を削減しながら本当に必要な保障を確保する設計が期待できます。相談によって最適化が期待されますが、個別の事情により結果は異なります。専門家のサポートを活用する選択肢として、まず一度話を聞いてみることをお勧めします。

資産形成や保険のご相談は『FPカフェ』へ

筆者:Christopher/AFP・宅地建物取引士。大手生命保険会社2年、総合保険代理店3年を経て、個人事業主・富裕層・経営者の保険×資産形成相談を多数担当。2026年に自身の法人を設立し、保険見直し・FP相談・iDeCo・NISA等の資産形成を実体験中。現在は都内法人を経営・インバウンド民泊事業を運営中。

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。

【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆

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