AFP・宅建士として保険代理店に5年間勤務し、70代のお客様から相続に関するFP相談を数多く受けてきた私が、2026年時点の制度情報と実務経験をもとに解説します。70代でFP相談を申し込む方の多くが「相続対策」を中心に据えているのには明確な理由があります。生前贈与・遺言書作成・生命保険活用・不動産整理という6つの実務軸を、順を追って具体的に示していきます。
70代のFP相談で相続対策が中心になる理由
平均寿命と「相続開始までの準備時間」の現実
厚生労働省の令和5年簡易生命表によると、70歳男性の平均余命は約15年、女性は約19年です。数字だけ見ると「まだ時間がある」と感じるかもしれませんが、相続対策の実務ではこの見方は危険です。
生前贈与の非課税枠を活用するには暦年単位での計画が必要ですし、認知症になると遺言書の作成も贈与契約も法的に困難になります。2025年の内閣府データでは、80代前半の認知症有病率は約20〜25%とされており、70代のうちに動き始めることには明確な合理性があります。
保険代理店時代、私が担当した70代後半のお客様が「もっと早く動けばよかった」とおっしゃるケースを何度も目の当たりにしました。FP相談を70代で申し込む方が相続対策を中心に据えるのは、この「準備時間の有限性」を肌で感じているからです。
2024年相続・贈与税制改正が70代相談者に与えた影響
2024年1月施行の税制改正により、生前贈与加算の期間が従来の3年から最長7年に延長されました。これは「亡くなる前7年以内の贈与は相続財産に加算される」というルールへの移行を意味します(経過措置あり)。
この改正により、70代での贈与開始が従来以上に重要性を増しました。80代に差し掛かってから慌てて贈与を始めても、相続財産への加算期間に引っかかるリスクが高まるためです。同時に、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設されたことで、使い勝手も変わっています。
こうした制度変更は専門家でないと全貌の把握が難しく、「税制改正を受けて自分の対策を見直したい」という動機で70代FP相談に訪れる方が2024年以降に増えているのは、私の知る複数のFP事務所でも共通した傾向です。
保険代理店時代の実体験:70代富裕層の相談から学んだこと
資産2億円超の経営者夫妻が抱えていた「見えない相続リスク」
総合保険代理店に勤務していた頃、資産2億円超の70代経営者夫妻を担当したことがあります。不動産・自社株・生命保険・預貯金と多岐にわたる資産構成でしたが、最初の面談で明らかになったのは「相続税の概算すら把握していない」という状況でした。
私はAFPの資格を活かして資産の棚卸しを行い、法定相続人の数・基礎控除額・各資産の評価額を整理した上で、連携する税理士への橋渡しを行いました。相続税の試算をすると、何も対策しなければ推定税額が3,000万円を超える見込みであることがわかり、夫妻は初めて問題の輪郭を掴めたとおっしゃっていました。
FP相談の価値は「税額そのものを計算する」ことより、「全体像を可視化して優先順位をつける」点にあります。この経験が、私が70代向け相続対策の相談に特別な重きを置く原点になっています。
生命保険の「非課税枠」を活用していなかった事例
同じ代理店時代に多く見かけたのが、既存の生命保険を「保障」としてのみ捉えており、相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)をまったく意識していないケースです。
法定相続人が3人いれば1,500万円まで非課税になるこの枠を使わない手はないのですが、商品知識として把握していない方が70代には多くいました。私自身、2026年に法人を設立した際に自分の生命保険を見直した経験があり、「保障」と「相続対策」と「法人税務」を同時に考える複眼的な視点が必要だと改めて実感しました。FP相談でこの整理をするだけで、対策の選択肢が大きく広がります。
生前贈与の活用と2026年時点の注意点
暦年贈与・相続時精算課税・教育資金贈与の使い分け
生前贈与には主に「暦年贈与」「相続時精算課税制度」「教育資金の一括贈与」の3つのルートがあります。それぞれ非課税枠・対象者・使途の制約が異なるため、家族構成と資産内容に応じた使い分けが求められます。
暦年贈与は年間110万円の基礎控除を活用するシンプルな手法ですが、前述の加算期間延長(最長7年)の影響を受けます。一方、相続時精算課税は2024年改正で年間110万円の基礎控除が追加されたため、「贈与税ゼロで毎年110万円を渡せる」という新しい使い方が生まれています。ただし相続時精算課税を選択すると暦年贈与には戻れない点は重要な注意点です。
教育資金の一括贈与(祖父母→孫、最大1,500万円非課税)は2026年3月末まで適用期限が延長されており、孫がいる70代にとっては有効な手段の一つです。各制度の適用要件・期限は毎年変わり得るため、最終的な判断は税理士やFPへの確認を推奨します。AFPとCFPの違い2026|AFP宅建士が示す6つの判断軸
「名義預金」と「贈与の証明」が相続で問われる理由
贈与を行っても、それが税務署に「実質的な贈与」と認められなければ、相続財産として課税対象になります。子や孫の名義で通帳を作って入金するだけでは「名義預金」と判断されるリスクがあります。
贈与契約書の作成、受贈者が自分で管理できる口座への振込、贈与税申告(110万円超の場合)——これらの手続きを毎年きちんと行うことが「贈与の証明」として機能します。私が保険代理店時代に関わったお客様の中にも、長年「あげているつもり」だった資金が、相続税調査で名義預金として認定されたケースがありました。手続きの形式を整えることは面倒に見えますが、対策の実効性を担保する上で欠かせない作業です。
遺言書作成と生命保険による相続対策の実務
自筆証書遺言と公正証書遺言の選び方
遺言書には大きく「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。自筆証書遺言は費用をかけずに作成できる半面、形式不備による無効リスクがあります。2020年から始まった法務局による「自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば形式チェックを受けられ、家庭裁判所の検認も不要になるため、費用を抑えたい方に有力な選択肢です。
公正証書遺言は公証人が作成に関与するため法的信頼性が高く、相続人間の争いを防ぐ効果が期待されます。財産が複雑な場合や家族関係に懸念がある場合には、公正証書遺言を選ぶ合理性があります。費用は財産額や内容によりますが、数万円〜十数万円程度が一般的な相場感です。宅地建物取引士として不動産を含む相続案件に携わってきた私の経験上、不動産が絡む案件では特に公正証書遺言の安心感が大きいと感じています。
生命保険の「受取人指定」が持つ相続対策上の意味
生命保険の死亡保険金は、受取人を指定しておくことで「相続財産」ではなく「受取人固有の財産」として扱われます。遺産分割協議の対象外となり、相続手続きとは切り離して迅速に受け取ることができます。これは相続争いのリスクを下げる効果が期待される点でも重要です。
加えて、前述の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が適用されるため、相続税の圧縮手段としても機能します。ただし、受取人の設定が古いまま放置されているケースは非常に多く、離婚・死別・疎遠などによって受取人が当初の意図と乖離していることもあります。70代FP相談では既存の生命保険の受取人確認を必ず行うことを私は推奨しています。AFP相談おすすめ2026|現役AFPが選ぶ6つの判断軸
不動産整理・評価額対策とFP相談の選び方
宅建士視点で見る「不動産の相続税評価」の落とし穴
不動産は相続税評価額(路線価・固定資産税評価額ベース)が時価より低くなるケースが多く、現金よりも相続税を抑えられる可能性があります。特に賃貸物件(貸家建付地)はさらに評価減が適用されるため、資産運用を兼ねた節税スキームの一例として活用される場面があります。
ただし、2022年以降の最高裁判決を受けて、「過度な節税目的の不動産購入」に対しては路線価評価ではなく時価評価を適用する税務当局の姿勢が明確になっています。宅建士として不動産の側面からも相談に携わる私の立場から言うと、不動産を使った相続対策は「保有目的と収益性」が伴っているかどうかが評価の分かれ目です。純粋な節税目的だけで動くと、税務リスクが生じる可能性があります。
FP相談で失敗しない「専門家の使い分け」と選び方
FPは相続対策の全体設計や優先順位の整理を担いますが、税務申告は税理士、登記・法律文書は司法書士・弁護士、不動産評価は宅建士の領域です。「FPに任せれば全部解決」ではなく、FPのサポートを活用しながら各専門家と連携する体制を整えることが、対策を実効性あるものにするコツです。
相談料の相場は、独立系FPへの単発相談で1回5,000〜2万円程度、継続型プランでは月額1〜3万円程度が一つの目安です(個別の事務所・内容により異なります)。無料相談の場合は保険販売等を収益源にしているケースが多いため、相談の目的と相談先のビジネスモデルを事前に確認することを推奨します。私自身、複数のFP事務所に相談した経験から、「何を解決したいか」を言語化してから申し込むと、相談の質が大きく変わると実感しています。
まとめ:70代のFP相談で相続対策を前進させるために
6つの実務軸を整理する
- 実務軸①:制度理解の更新——2024年改正による贈与加算期間の延長・相続時精算課税の基礎控除新設を自分のケースに当てはめて確認する
- 実務軸②:資産の棚卸し——不動産・保険・預貯金・有価証券・自社株を一覧化し、相続税の概算を把握する
- 実務軸③:生前贈与の計画立案——暦年贈与・相続時精算課税・教育資金贈与の使い分けを整理し、名義預金にならない形式を整える
- 実務軸④:遺言書の作成・見直し——自筆証書遺言保管制度か公正証書遺言かを資産構成・家族関係に応じて選択する
- 実務軸⑤:生命保険の活用と受取人確認——非課税枠(500万円×法定相続人数)の活用状況と受取人設定を点検する
- 実務軸⑥:不動産の整理と評価対策——宅建士・税理士の視点を交えながら、保有目的と収益性を踏まえた評価額対策を検討する
次の一歩:FP相談を活用して全体像を掴む
70代のFP相談で相続対策を中心に据えることには、制度的にも実務的にも明確な合理性があります。大切なのは「完璧な計画」を作ることより、「まず全体像を可視化して動き始める」ことです。
私はAFP・宅建士として多くの相談に携わってきましたが、早く動いた方ほど選択肢が広く、対策の効果が高くなる傾向を実感しています。一方で、個別の税務判断や法律行為は必ず税理士・司法書士等の専門家にご確認ください。本記事はあくまで情報提供を目的としており、特定の投資・保険・税務行為を推奨するものではありません。
相続対策の全体設計や保険の見直しをFPに相談したい方は、下記のサービスが選択肢の一つとして参考になるかもしれません。個別の事情により最適な対策は異なりますので、まずは相談の場を持つことから始めることをお勧めします。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
本記事のリンクはアフィリエイトリンクを含みます。
